「クレジットカードの仕組みについて調べていたら、イシュアーとアクワイアラーという言葉が出てきた。難しそうな響きだけど、何のこと……?」
クレジットカードの仕組みを正しく理解するためには、イシュアーとアクワイアラーについて知ることが必要不可欠。
聞きなれない用語なので難しそうな印象を与えますが、その実態はクレジットカードを発行したり、加盟店を管理する会社のこと。正体さえ分かってしまえば理解はそう難しくありませんよ。
そこで、ここではイシュアーとアクワイアラーについて徹底解説!
具体的な業務内容や、イシュアーとアクワイアラーが決済システムにどうかかわっているのかご説明いたします。あなたがクレジットカードを使ってからイシュアーとアクワイアラーがどう動いているかも時系列順に分かるので、クレジットカードを使うと何が起こるのかもバッチリ分かります。
記事を読んで、クレジットカードの仕組みの理解を完璧にしちゃいましょう!
※国際ブランドについてご存知ない・詳しくない方は、先にこちらの記事を読むことをお勧めいたします。
この記事の目次
クレジットカードの決済システムを形成する!?イシュアーとアクワイアラーとは?
クレジットカードの決済には、イシュアーとアクワイアラーという2つの機関が携わっています。
- イシュアー(クレジットカード発行会社)
- アクワイアラー(加盟店契約会社)
一言でまとめると、イシュアーはカードの発行をしていて、アクワイアラーは加盟店を増やしたり、管理したりしています。
イシュアーとアクワイアラーがそれぞれ存在することで、クレジットカードでは決済システムが作り上げられています。
クレジットカードを安心して利用していくためには、両者の役割について知っておくことも重要と考えられるでしょう。
イシュアーはカード発行を行う会社!具体的な業務内容は?
イシュアー(イシュア)は、クレジットカードの発行~利用に関連したを行う会社です。
「イシュアー」と用語だけを言われても意味が分かりづらいですが、英語で「発行者」という意味であることを知れば、役割を認識しやすいのではないでしょうか。
- カードの発行や入会審査、会員管理
- カード会員の購入代金の立て替え
- ポイントサービスや保険などのサービス提供
クレジットカード会員と積極的に関わるのは、アクワイアラーでなくイシュアーとなっています。
イシュアーが行っている様々な業務について、解説します。
①カードの発行に関わる業務
イシュアーは、クレジットカードの発行を行っています。
例えばイオンクレジットサービスは、「イオンカード(WAON一体型)」や「イオンカードセレクト」などを発行するイシュアーの会社となります。
VISAやMastercardなどの国際ブランドからライセンス(対象の国際ブランド加盟店で利用可能なクレジットカードを発行する許可)を受けたイシュアーは、様々なサービスを付帯したクレジットカードを発行しているのです。
イシュアーが国際ブランドからライセンスを受けたクレジットカードは、国内だけでなく世界中で、「国際ブランド加盟店」での支払いに使えるようになります。
国際ブランドが付帯されていないクレジットカードは、そのカード会社に加盟しているお店でしか使えません。
国際ブランドが付帯されていないと利便性が低く、使いたい場所で使えないトラブルが起こってしまうことも考えられます。
会員にカードをたくさん使ってもらうためには、国際ブランドのライセンスを受け、多くの場所で使えるようにすることが重要です。
また、イシュアーはただクレジットカードを発行するだけではありません。
入会を申し込んだ人に対する入会審査も、イシュアーが行います。
ただし入会審査はすべての工程がイシュアー内で完結するわけでなく、入会可否を決める要素の一つである信用情報は、信用情報機関から参照されます。
発行後、カード会員の管理(入会・退会等の手続きやカードの更新可否の判断など)を行うのも、もちろんイシュアーの仕事です。
②カードで買い物をした代金の立て替え
クレジットカードで買物をした代金の「立て替え」は、イシュアーが行っています。
(立て替えとは、発生した支払いを一時的に別の人が代わりに支払うことです。)
カード会員がクレジットカードを使って買い物をした際は、一旦代金がカード会社に立て替えられ、加盟店に売上を渡すアクワイアラーへ支払われます。
口座振替の指定日など、設定された支払日になると、カード会員から代金が引き落とされます。
つまりクレジットカードを使うと、会員は一度イシュアーにお金を借りた状態になり、支払日に金額を返済する、と考えられるでしょう。
③ポイントサービスや特典の提供
イシュアーはただクレジットカードを発行しているだけでなく、ポイントサービスやその他特典も提供しています。
クレジットカードにはたくさんの種類があり、それぞれ付帯されている特典が異なります。
選択肢が多いため、ただ代金を立て替えて後払いにできるだけのカードは、もはや誰も使ってくれません。
イシュアーが新規のカード会員を増やして利益を得るためには、魅力的なサービスの提供が重要となります。
イシュアーは日々、支払額に応じたポイント付与・ポイントと交換できる景品を用意したり、保険などのサービスを考えたりしているのです。
また、コールセンターを用意して会員の疑問を解消したり、手続きを電話で行ったりするのもイシュアーです。
④WEB会員サービスの展開や立て替え代金の請求
イシュアーは、請求書を会員に送ったり、WEB上で利用明細のチェックや支払い方法変更などができるサービスを提供したりもしています。
イシュアーからすると、カードの利用によって一度立て替えた代金はしっかり回収しなければいけません。
請求書の送付やWEB会員サービスの設置にはコストがかかると考えられますが、支払い忘れなどのトラブルを防ぐため、充実した支払い関連サービスを提供しています。
ただし、クレジットカードの代金が未払いになった際に代金を回収する会社は、イシュアーと異なるケースもあります。
例えば、NTTドコモが発行するdカードで支払期日を過ぎた際は、代金回収の業務が以下の3つの会社に委託されています。
- ニッテレ債権回収株式会社
- 田中・山崎法律事務所
- NTS総合弁護士法人
dカードの債権回収に関する委託先(お支払い期日を過ぎた場合のご案内・お問い合わせ等の窓口)はどこですか?
アクワイアラーは加盟店をとりまとめる会社!具体的な業務内容は?
アクワイアラーはクレジットカードの利便性を高めるため、裏で様々な手続きをしている会社です。
- 加盟店の契約に関連した業務
- 売上データをイシュアーに渡す
- イシュアーが立て替えた代金を、加盟店に渡す
アクワイアを英語表記で「acquire」、意味は「獲得する」です。
「r」を付けて「acquirer(アクワイアラー)」とすれば「獲得する人」といった意味合いになるので、少し役割が理解しやすくなるでしょう。
クレジットカードの所有者が直接アクワイアラーの会社と何かやりとりをすることはありません。
しかし普段の生活でクレジットカードを使えているのは、アクワイアラーのおかげです。
ここからは、アクワイアラーが行っている様々な業務の内容について解説します。
①加盟店契約に関わる業務
アクワイアラーは、クレジットカードの加盟店契約に関わる業務を行っています。
クレジットカードは、カードに付帯されている国際ブランド、または国内ブランドの加盟店でしか使えません。
つまりたくさんのお店が加盟店となってくれなければ、せっかくクレジットカードを用意しても、誰も使ってくれないため利益も得られません。
アクワイアラーは日々様々なお店・サービスと交渉をして、加盟店契約を結んでいます。
なお、ただ無条件に加盟店を増やしているだけではありません。
加盟店になりたいと申し出たお店などをしっかり審査してから契約しています。
審査してクレジットカード販売に向いている商品が販売されているかなどがチェックされ、「カード会員がトラブルに巻き込まれる」などのリスクの発生を防いでいるのです。
②加盟店の売り上げデータをイシュアーに渡す
アクワイアラーは、加盟店の売上データをイシュアーに渡しています。
イシュアーはカードの発行や代金の立て替えを行っていますが、加盟店と直接契約しているわけではありません。(ただし、イシュアーとアクワイアラーを兼任している会社は例外です)
アクワイアラーが売上データを加盟店から受け取って、イシュアーに渡すことで、支払いの管理を行っています。
なお正確には、イシュアーに売上データを渡すにあたって、「処理センター」も経由されます。
③イシュアーが立て替えた代金を加盟店へ支払う
イシュアーがアクワイアラーに渡された売上データをもとに立て替えた代金は、アクワイアラーを経由して加盟店へ支払われます。
加盟店は、アクワイアラーから代金を受け取ることで、クレジットカード払いによる売上げを獲得できるのです。
イシュアー、アクワイアラー、国際ブランドを兼任している会社も存在する
①日本の場合、イシュアーとアクワイアラ―は兼任する事が多い
イシュアーとアクワイアラーは別々の会社になっていることもあります。
しかし日本では、同じ会社がまとめてそれぞれの業務を行うのが一般的です。
例えば、三井住友カード株式会社はイシュアーとアクワイアラーを兼ねています。
②イシュアーとなるカード会社と、国際ブランドは異なることも
JCBやアメリカン・エキスプレスは、イシュアーとアクワイアラーに加えて、国際ブランドのライセンス発行までまとめて行っている会社です。
ですが、イシュアーと「国際ブランド」は、異なる会社のケースもあります。
JCBやアメリカン・エキスプレスなど国際ブランドを展開する会社が自ら発行するカードは、その会社の国際ブランドのカードです。国際ブランドが直接発行するカードは、プロパーカードと呼ばれます。
しかしイシュアーは多くの場合、国際ブランドからライセンスを受けて、国際ブランドを付帯したクレジットカードを発行しています。
イシュアーとアクワイアラーは決済システムにどう関係してくるの?
イシュアーとアクワイアラーは、クレジットカードの決済システムにおいて、それぞれ別の会社・カード会員を仲介しています。
また、売上の管理においては、イシュアーとアクワイアラーの間に処理センターが経由されます。
- イシュアー:利用者と国際ブランドの仲介
- アクワイアラー:加盟店とイシュアの仲介
- 処理センター:アクワイアラーが加盟店から受け取ったデータを一旦受け取り、利用明細などの集計を行う作業を行う
イシュアーとアクワイアラーはどこを仲介して何をしているのか?
情報処理センターはどのような情報をどのように処理しているのか?
それぞれ詳しく確認していきましょう。
①イシュアーは利用者と国際ブランドを仲介・買い物代金を立て替える
イシュアーは、発行するクレジットカードに対して国際ブランドからライセンスを受けることで、実質的に利用者と国際ブランドを仲介しています。
クレジットカードは、付帯されている国際ブランドの加盟店で使えるので、言い換えればクレジットカードに国際ブランドが付帯されていなければ、便利に使えません。
「国際ブランド加盟店で支払いにクレジットカードを使う権利」をクレジットカードに付帯して会員に渡すのが、イシュアーが「利用者と国際ブランドを仲介」していることの意味です。
②アクワイアラーは加盟店とイシュアを仲介し、売上を管理する
アクワイアラーは、加盟店で発生した売上を管理して、イシュアに提供しています。
イシュアーはカード会員と積極的に関わっていますが、アクワイアラーはイシュアーと加盟店の間を取り持っているので、カード会員とは直接関わりません。(イシュアー=アクワイアラーの会社は例外として直接関わりますが、アクワイアラーの手続きにおいてカード会員と遣り取りをすることはありません)
③アクワイアラーが用意した取引データは、処理センターが間に入ってイシュアーに送付する
アクワイアラーは加盟店から売上データをもらってイシュアーに渡しますが、渡すにあたってさらに「処理センター」が経由されます。
クレジットカード会員はたくさんいるので、アクワイアラーだけで処理し切ることはできません。
処理センターがコンピューターを使って利用金額の計算をしたり、決済可否を判断したりします。
集計されたデータはイシュアーに送られるので、流れとしては以下のとおりです。
業務の流れ
クレジットカードで支払いをしてからイシュアーとアクワイアラーは何をしている?購入シミュレーション
クレジットカードで会員が支払いを行うにあたって、イシュアーやアクワイアラーは様々な手続きを裏で行っています。
ここまでの解説を踏まえつつ、決済のしくみの始めから終わりまでを購入シミュレーションとしてまとめます。
クレジットカードで支払いをした際の、イシュアーとアクワイアラーがする業務の流れ
以上のとおり、カード会員からするとただ加盟店に代金を支払っただけに思える支払手続きでの裏では、イシュアーやアクワイアラーなどの会社が様々な手続きを行っています。
まとめ
- イシュアーは、代金の立て替えや、カード会員へのカード発行、国際ブランドからライセンスを受けるなどの業務を行う
- 新規会員を増やすため、ポイントサービスなどの特典もイシュアーが用意する
- アクワイアラーは、加盟店との契約を増やしたり、イシュアーから受け取った売上代金を加盟店に渡したりする
- アクワイアラーが加盟店から受け取った売上データは、処理センターが間に入って集計する
- イシュアーとアクワイアラーの役割は同じ会社がまとめて行うこともあり、JCBなど国際ブランドのライセンス発行まで合わせて行う会社もある
クレジットカードを使って買い物をする際は、裏でイシュアーやアクワイアラーなどが様々な手続きを行っています。
複雑な工程をユーザーが知ることなく行っているので、縁の下の力持ち的な存在と言えるでしょう。

この記事の監修専門家